語感による科学的名づけ

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   トランプ! その音の響きは?  

トランプ大統領、鮮烈の登場である。オバマからトランプへ、百八十度回転した感じである。トランプとオバマの言葉の音のイメージはどうだろう。トランプはやや硬質な華やかさのイメージ、オバマは質感のある落ち着いたイメージである。ただ、それぞれ人間個人としての性格は苗字によるよりも子供の頃の名前から影響を受ける。とすると、性格を見るならドナルドとバラクの音のイメージということになる。合わせてこれらを分析してみた。イヴァンカも加えてみた。
なお、語感の言語化は切り口によって微妙に異なる。そこで、今回は一般イメージとしての切り口に、基本属性(物性を中心とした)の切り口と人物イメージとしての切り口を並べてみた。なお、ここには上位5つのみを挙げた。これらの間での順位差は絶対的なものではない。全体を眺めて性格傾向を感じ取って欲しい。もちろん、人の性格は育ちのみによって決まるのではない。生まれ、すなわち遺伝子によっても影響される。
その子の名前の音は育ちの環境の一要素である。その名前を呼ばれ、それを自分として聞かされ続けるのだから、その子の性格形成に大きく影響する。

トランプオバマドナルドイヴァンカバラク
1充 分親近感濁 り新 鮮散らばり
2乱 れおおらか重 み緊張感乱 れ
3散らばりぼやけ充実・充分輝 き豪 華
4丁 寧濁 り重苦しいカワイイ揺れ・揺らぎ
5かわいい鈍 い鈍 いイキイキ楽しさ
1照り・輝き存在感存在感照り・輝きばらけ・散ばり
2多 い充 満弾 け乱 れ
3乱 れ遅 い遅 いキ レ意外・違和感
4粘 りぼかし・崩れ大きい集 中ぼかし・崩れ
5滑らか温かい勢 い迫 り充 満
1天真爛漫パワーパワー生き生き天真爛漫
2包容力天真爛漫責任感信頼感チャレンジング
3チャレンジング責任感信念・決断チャレンジングパワー
4信頼感癒 し自負心知 性豊か・豊潤
5豊か・豊潤包容力信頼感シック行動力

     (平成29年2月21日)

   チャラン・ポ・ランタン  

チャラン・ポ・ランタン。姉妹の音楽ユニット、独特の無国籍サウンドで海外でも評判になっている。このグループ名は‘ぱみゅぱみゅ’と同じ流れの言葉遊び感覚のネーミングで、オノマトペ‘ちゃらんぽらん’の捩りと思われる。‘ポ’を独立させることで‘尻取り遊び’にもなっている。
オノマトペ‘ちゃらんぽらん’はどんな意味をもっているのか。いい加減という意味合いをもっている。ではなぜ‘ちゃらんぽらん’がいい加減という意味になるのか。‘ちゃらん’と‘ぽらん’が合わないからである。‘ちゃらん’と‘ぽらん’ではずれている。‘CHa’と‘Po’では子音も違う。例えば、‘KaRaN-KoRoN’なら子音が揃っておりリズミカルなのである。
前が‘ちゃらん’であれば、それに続くのは子音を揃えて‘ちょろん’、あるいは‘ちょらん’である。後が‘ぽらん’であれば、その前は ‘ぱらん’である。そこを、わざとずらすことによって、いい加減さが感じられる。‘ちゃんぽん’といえば、異なるものをいっしょくたにすることであるが、これもこの効果を狙ったものだ。
ちなみに、語尾の‘らん’には‘らんらん’、‘ばらんばらん’、‘がらんがらん’などと同じように、纏まるのではなく広がるイメージがある。
‘ちゃらん’と‘ぽらん’の組み合わせに似たオノマトペに‘ちゃぽん’がある。これは小さなものが水面に落ちて水が小さく‘ちゃっ’と飛び散り、可愛く‘ぽん’と水中に消える様子を描写したものだ。それが大きなものになると‘じゃぼん’となる。それぞれを濁音化して大きさ激しさを表現しているのである。
ちなみに、水面の水があまり飛び散らない場合は、‘とぽん’、そして、それが大きなものの場合は濁音化して、‘どぼん’となり、勢いよくのイメージがでてくる。オノマトペは面白い。
ついでに、‘ランタン’とは洋風釣ランプのこと。「赤いランタン夜霧に濡れて・・・」は‘港シャンソン’の一節、郷愁を誘う懐かしのメロディーである。やはりアコーデオンともよく釣り合っている。
  (平成28年5月31日)

   爆買い  今年の流行語大賞候補  

今年も流行語大賞の季節が近づいてきた。先日、大賞候補が発表されたが、その中の一つに目がとまった。
‘爆買い’である。
そう言えば、最近新聞紙上などでよく見受ける。中国人観光客などによる大量買いである。言いえて妙。その感じがよく出ている。
ところで、その感じはどこから来るのか。
意味か。‘爆買い’の‘爆’とは、爆発、爆音、爆弾などの‘爆’である。それでは買い物と爆発は関係があるのか。‘爆買い’とは爆発的に買うことか。少し違う。
ではなぜ‘爆’か。語感からであろう。‘Ba’の持つ大量感、‘Ku’の持つ積極性のイメージが‘爆買い’の行為とマッチしているのである。‘買い’が‘GaI’と連濁することによって、ワイルドさなども加わり、まさにピッタリの表現になったのである。語感を分析してみた。
    (平成27年11月13日)

1豊 か豊 かチャレンジング
パーソナリティ2覇 気充実した覇 気
3ダイナミック温 か積極的
4力強い面倒見のよい個性豊か
5たくましい力強いダイナミック
爆買い''''バク''''ガイ
1強 烈豊 か強 烈
イメージ2あでやか豪 華激しい
3にぎやかあでやかワイルド
4豊 かドレッシー積極的
5豪 華グラマラスチャレンジング

   ダメよ〜ダメダメ  

今年の流行語大賞の一つに「ダメよ〜ダメダメ」が決まった。
‘ダメよ’はオノマトペではないが、音のもつ感じが非常によく感じられる。
‘ダ’も‘メ’も‘よ’も、それぞれ言音感がもろに出ているようだ。
‘ダ’は‘断定’の‘ダ’、‘メ’は‘命令’の‘メ’、‘よ’は‘呼掛け’の‘よ’。
このように言うと語呂合わせのように聞こえるが、言音感がそうなのである。
‘ダメよ’の語音感は言葉全体のイメージというよりは、拍一つ一つの言音感がそれぞれそのまま効いているようだ。だから「ダ・メ・よ」と一音一音区切って発声するとイメージがなおよく伝わる。
(「ダメよん」と発声すると、‘ん’が鼻音で鼻にかかるため甘えのニュアンスが出る。)
‘メ’に抑制のイメージがあるのは、口腔を膨らませて発声するため/M/に膨張のイメージがあり、それを下に広がるイメージの/e/が押さえつけるために生じるのである。母親が幼子を叱る時の‘メ!’がそうだし、‘ヤメ!’の/Me/もそうである。‘命令’という漢字語は日本製で、この音のイメージを活かして作られたと思われる(そもそも、‘命ずる’の‘命’を日本語で/メイ/と読み做したのは音のもつイメージが合うからだと思われる。もともとの中国音はかなり違うものだっただろう)。
ちなみに、「〈脳と文明〉の暗号」に倣えば、自然界の物の音には破裂音、衝突音、摩擦音、そして振動音がある(なお、「〈脳と文明〉の暗号」では、衝突音、振動音がなくて共鳴音とあるが、共鳴音とは音そのもののことで、すべての母音が共鳴音である)。
衝突音には単にぶつかった衝撃音とぶつかって咬みこむ、あるいは食い込むような時の音があるが、単にぶつかった時の衝撃音が日本語では/D/で、咬みこむ時の音が/G/である。したがって、重いものが激しくぶつかった時の形容が‘ドン’である。/D/に拡散の/a/が付くと衝撃の激しさの面が強調される。ここから/Da/には激しさを言いきるイメージが出てくる。
同じ衝突でも、咬みこんでいく、かぶり込んでいく場合は/K/である。これは/K/、/G/の調音点が口腔の奥にあり、口の形を中が空洞で覆いかぶさるようにするからである。‘咬む’、‘かぶる’、‘カラカラ’などはこの口の形からできた言葉だと思う。そして、それに力が加わると/K/が濁音化され/G/となり、‘がぶり’、‘がつがつ’、そして‘ガンガン’などの表現となる。
破裂音は、激しい場合が/B/で、軽く、あるいは弾ける場合が/P/である。物が水面に落ちた場合も/B/、/P/を使うが、これは水の場合は衝突のイメージよりも破裂のイメージが強いからである。/B/、/P/が破裂の描写に使われるのは、もちろん発音の際に唇を破裂させるからである(英語でも、破裂には/B/音が使われるようだ。Burst, bomb, break・・)。
なお、破裂の余波として起こる振動も/B/、/P/で表される(英語では/V/。日本語には/V/音はない。Vibration, vibrato)。この振動の共鳴部分も母音で表される。
摩擦音は/Z/。擦れがわずかな場合は/Z/の清音の/S/。そこから、/S/は主にものの流れの与える感じに使われる。/S/を濁音化した/Z/は、濁りが増し抵抗感を強く感じさせる。
衝突の/D/の清音である/T/は、唇の動かし方の感じ、そして舌そのものの充実感から/Tu/は‘付く’、‘つつく’。/To/は‘止まる’。そして/Ta/は‘溜る’、さらに、‘たくさん’などのイメージに使われる(唾が溜る感覚があるからかもしれない)。
/Y/は、母音/I/から/O/への変化を一音で発する半母音で、/Yo/は‘揺れ’、‘やさしさ’、‘弱さ’、そして本来が母音であることから‘親密感’を強く感じさせる。その辺りから、‘寄る’、‘寄せる’、そして‘呼ぶ’というような言葉が出来てきたのだろう。単音/ヨ/もこれらの言葉のもつイメージを連想として思い起こさせる。
‘ダメ’の場合、言葉の音の響きの与えるイメージ、すなわち言音感と言葉の意味との関係は直接的である。/Da/=断定、/Me/=命令、そして、断定+命令=禁止になっているからである。もちろん、/Da/のもつイメージは断定だけではない。/Me/のもつイメージも命令だけではない。/Da/には激しさのイメージの他にも濁りや粘りのイメージなどもある。/Me/には全体的に押さえつけるイメージがある。これらのイメージの中から断定と命令を選び出したのはやや恣意的である。しかし、無いものからは選び出せないので、ごく限られた範囲での恣意性で、むしろ自由度と考える方が適切だと思う(納得による多義性からの選択)。
このように言音感と意味とが直接的に繋がっているものが大和言葉には多い。特に簡単な日常会話の言葉に多い。
例えば、同じ断定の意味で/Da/を使った言葉に‘だから’、‘だって’、‘だろう’などがあるが、‘だから’の/Ka/は可能性の‘か’、そして/Ra/には散ばりのイメージがあるから、‘だから’は可能性の広がりを断定しようとしていることになるのである。
‘だって’の促音/っ/には/だ/を強調する働きに加えて詰まるイメージがあり、/Te/には一度止まって受けるイメージがあるので、ちょっと待ってよというような意味での使われ方をするのである。
(これらの点について詳しくは、別サイト「語感言語学」をご覧ください。)
     (平成26年12月5日)

   お・も・て・な・し  

今年の流行語大賞候補に急浮上したのが2020年オリンピック招致委員会プレゼンテーションでの滝川クリステルのクロージング「お・も・て・な・し」である。
語感的には落ち着いてしっとりした、むしろ平凡な日本語である。
意味的には、「お+もて+なす」で、‘お’は丁寧さを表す接頭辞、‘もて’は‘もてはやす、もてあそぶ、もてあます’の‘もて’と同じ使い方だろう。‘なす’は‘はやす’、‘あそぶ’、‘あます’に対しての‘なす’であるから、何でもしようということなのだろう。
‘もてる’という表現がある。「ヤツはモテモテだった」などの‘もて’である。これも同じような感覚の使い方ではないだろうか。‘もてる’には「持てるもの、持たざるもの」のように‘持っている’という使い方もあるが、‘モテモテ’の‘もて’は受身的な使い方である。言葉には辞書には表現しきれない感覚のようなものがある。
また、‘なす’には‘見なす’、‘聞きなす’という言い方がある。これと同じ感覚の言い方だとすると、‘モテた’状態にするという意味合いになる。「お・も・て・な・し」はこのようなニュアンスも含まれた表現なのだろう。
ちなみに、‘モテモテ’ の ‘もてる’ という日本語は意外に古くからある表現で江戸時代の洒落本・*婦人伝(1753)に「能(よく)あそぶ客は、もてるにこころなし」とあるそうである。(*は足編につくりは石)
       (平成25年9月17日)

1丁 寧濃 厚親しみやさしいみずみずしい
2濃 厚温 厚きめ細やか柔らか若々しい
3ゆっくりゆっくりひかえめぼかしたキュート
4包容力豊 かじっくりセクシー輝 き
5重 厚まろやかしっかりおおらかしっとり

   NISA(ニーサ)  

来年導入される少額投資非課税制度の日本版ISAの愛称が「NISA(ニーサ)」に決まった。
「いいさ」、「いーさ」に「N」が付くと「NI−SA」。
「いーさ」は「さ」が語尾ではあるが、さらりと流した軽い感じ。これに「N」が付くと、基調は変わらないが、滑らかさ、柔らかさが強くなる。
元本限度額が一人1百万円、われわれ庶民にとってはそれでも有り難いが、この制度のキャンペーン・タレント黒木瞳さんにとっては、この程度の金額では「どうでもニーサ」かも。
   (平成25年5月3日)
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   じぇじぇじぇ!  えっ!  

「じぇじぇじぇ!」、これが今年の流行語大賞候補だそうである。NHKの朝ドラ「あまちゃん」の主人公が発する岩手県北三陸地方の漁師言葉で「えっ!」の意味なのだそうである。
「えっ」は音からして、意外性のある驚きの表現である。「e」には、上から押し付ける、一歩身を引くイメージがあって、躊躇感が強い。では、「じぇ」と「えっ」でどう違うか、語感で考えてみた。
「je」は「e」に「s」を付けて「se」、これが濁音化して「ze」、さらにこれが拗音化して「zye=je」で、かなり湿り気が出て、濡れてしまう。
「e」はやや粘りがあるものの、それほど濡れてはいない。「je」まで水気があると、重量感が出るものの、やや下品さが出てくる。海女言葉としてはいいのだろうが、流行るかどうか。流行っても一過性だろう。
ところで、「じぇじぇじぇ」となると「ありゃりゃ」と語調が似てくる。
ちなみに、「ありゃりゃ」は「あれれ」が崩れたもので、もともとは「e」音である。
「あれ」から「ありゃ」への変化を考えると、「じぇ」と「あじゃ」との関連も同じかもしれない。
「あじゃ」が逆に清音化すると「あちゃ」、軽く明るくなる。さらに拗音でなくすると「あた」。ここから、しまった、という感じが出てくるのだろう(これは、「T」には止まるイメージがあって、躊躇感に繋がるから)。
     (平成25年5月3日)

   きゃりーぱみゅぱみゅ と レディ・ガガ  

きゃりーぱみゅぱみゅ。中高年の男性には舌を噛みそうな名前である。女性ファッションモデルで歌手。正式な芸名は、Caroline Charonplop Kyarypamyupamyu である。
‘語感’を レディ・ガガ と比較してみた。全体的イメージはまさに正反対である。レディ・ガガ のシャープさと迫力に対し、パミュパミュ がいかにも幼児受けしそうである。惜しむらくは、キャリー にインパクトがない。また、キャリー、パミュパミュ 共に浮いた感じがある。同じ方向であるのなら、大人っぽい キャロライン の方がスッキリするのではないだろうか。(勝手に二つに分けてはいけないのかな。ただ、発音の時には自然に二つに分かれてしまうので、別々として分析した。)
 正式には、名前はひらがな表記であるが、‘語感’からはカタカナが相応しい。あえて、ミスマッチを指向したのだろうか。
   (平成24年3月31日)

キャリー''''パミュパミュ''''レディガガキャロライン
******************************
若々しい''''ういういしい''''清らか野性味楽しい
しっとり''''明るい''''りりしいにぎやかはなやか
キュート''''浮揚感''''クリア強 烈かわいい
軽やかやさしい鋭 いカジュアルあざやか
浮揚感若々しい清 楚ダイナミックにぎやか

画像の説明

   レディ ガガ     絶妙のバランス  

‘ガガ’と‘レディ’の語感を分析してみた。
以下の表にあるように極めて対照的である。‘ガガ’が暴力的なまでに躍動的であるのに対し、‘レディ’は、‘レ’の音が効いて、清らかですっきりしている。
‘レディ ガガ’というネーミングは、この‘レディ’を前に持ってくることによって、圧倒的な迫力を感じさせながらも、全体として、すっきりさを出すことに成功している。 上品さすら感じさせる秀逸のネーミングである。
これが、‘ガガ レディ’となっておれば、逆に‘ガガ’の印象が前面に出て、さわがしいだけのイメージになってしまう。
たまたま、ミスタイプから生まれたネーミングだそうであるが、偶然には人智を越えた力があるということだろう。しかし、それを拾い上げたレディガガの感性もさすがと言わざるをえない。
(われわれ凡人は、先入観に安住して、折角の偶然の贈り物に気付かず、みすみす見逃してしまっているのではないだろうか。反省!)
ついでに、‘マダム ガガ’も分析してみた。
この組み合わせでは、‘ガガ’の迫力がやや抑えられるが、逆に‘マダム’の豊満さが強調され、肥満気味の女ボスのようになってしまう。
日本流の‘ガガ夫人’、‘ガガ女史’、‘ガガ嬢’もあまり上品とはいえない。
これらの違いは、ネーミングのむつかしさであり、また、ネーミングの妙でもある。

ガガ''''レディ''''マダム
********************
1野性味''''清らか''''豊 か
2にぎやか''''りりしい''''温 厚
3強 烈''''クリア''''まろやか
4カジュアルキリリボリューム感
5ダイナミック清 楚ゆっくり
1迫力・勢い''''意思・指向性''''充ちた・塊り
2パワー・力感''''透明感''''パワー・力感
3積極的(主体的)''''冷たい''''集中・纏り感
4賑やか''''積極的(主体的)''''柔かい
5大きい''''鋭い・線的''''繋がり

画像の説明
   平成23年6月29日

   「がんばろう! 日本」  

第83回センバツ高校野球大会のスローガンは、「がんばろう! 日本」であった。
オリンピックをはじめ従来の国際大会での声援は「頑張れ にっぽん!」が普通である。
しかし、死者不明者2万人以上を出した未曾有の大災害・東日本大地震の余震が収まらぬ中での大会であるから、‘がんばろう’のスローガンが自然に湧き上がったのだろう。

それでは、‘がんばろう’と‘がんばれ’では、どう違うのだろうか。
‘がんばろう’には、私も含めていっしょにがんばろうという意味合いが強い。一方、‘がんばれ’には、私も応援するからがんばって下さいというイメージがある。
それでは、この違いは何処から来るのか。
‘がんばろう’と‘がんばれ’の違いは、語尾‘ろう’と‘れ’の違いである。
これは用法上の違いで、文法の問題である。したがって、約束事で、意味の違いということになる。
‘やろう’と‘やれ’、‘走ろう’と‘走れ’、の違いと同じである。ラ行活用変化ではないが、‘行こう’と‘行け’、‘食う’と‘食え’も同じである。(志向形(未然形?)と命令形)

では、なぜ、このように文法で決まったのか。すなわち、なぜ、このような約束事に決まったのか。
ここには、‘語感’が大きく関わっていると思う。
活用変化の発音上の違いは /O−/ と /E/ の違いである。(‘がんばろう’の語尾の発音は、/U/ ではなく、/O/ の長音である。)
母音 /O/ の‘語感’には、重い、丸く一つに纏まったイメージがあり、それが長音になると動きが出てくる。ここから、いっしょにやろうというイメージが出てくる。
一方、/E/ は、舌を下に平らにし、下あごを少し引き気味に発音するので、下に押さえつけるイメージが出て、命令形に使われるようになったのだろう。
ここらから文法上の使い分けが出来てきたのではあるまいか。

ただ、‘がんばろう’と‘がんばれ’には、この意味上の違い以上にニュアンス的な違いが感じられる。
これは、純粋に‘語感’の違いによるもので、/RO−/ には重さと少々の暗さがあり、/RE/ には、/R/ のもつ動きと /E/ のもつ薄ぺらさが合わさって明るく跳ねるイメージがある。
ここから、‘がんばれ’にはお祭りのイメージがよく似合い、‘がんばろう’には、どこか悲壮感がただよう。
やはり、今大会のスローガンとしては「がんばろう! 日本」が相応しい。
      平成23年4月5日

   「ゲゲゲの〜」が今年の流行語大賞。ゲーッ!!  

「ゲゲゲ」の‘語感’を分析してみた。ファンダメンタル・イメージ、ベスト10に‘下品’が入っている。
これは、‘ゲ’が生理音を言葉の音にしたものだからである。
‘ゲップ’、‘ゲロ’、‘ゲーゲー’などの‘ゲ’である。
‘げんなり’‘げっそり’なども、これらから出来た表現だろう。
‘下品’‘下卑た’‘下司野郎’なども、この流れから出来た言い回しだろう。
ただ、‘ゲ’という音を使う言葉には、厳格、芸術、月賦などがあり、これらには必ずしも下品さがあるわけではない。
月賦にいたっては全く生理音と同じ音であるにもかかわらず下品さとは関係がない。
‘げんかく’‘げーじつ’などは輸入語を日本語の音に直したものである。したがって、意味が中心で音は二次的なものであったろう。

このように、言葉には、本来の‘語感’から出来たものと、意味から入ってきたものとがある。
日本語、特に話し言葉は、意味から入ってきた言葉も、‘語感’に合うものはそのまま残り、‘語感’に反するものはやがて使われなくなる。そして、一部の言葉は本来の意味から‘語感’に合う意味へと変えられ使われるようにすらなった。
‘深謀遠慮’の‘遠慮’などの使い方も‘語感’に引っ張られたものであろう。
‘厳格’の‘語感’は、‘格’の‘語感’が効いて、意味との違和感はない。
日常会話では、芸術、芸術家よりも、アート、アーティストだろう。
月賦にいたっては今や死語にちかく、ローンだろう。(分割という言い方もあるが、)

‘ゲゲゲの’は、妖怪鬼太郎を形容するオノマトペ的な表現であって、‘ゲ’と‘キ’の語呂が合っていて、‘語感’的にも妖怪のイメージにそぐうものである。
「ゲゲゲの女房」とは「ゲゲゲの鬼太郎の作者の女房」から来たもので、こうなると、「ゲゲゲの」は‘語感’によるイメージ的なものではなく、意味説明的なものになっている。
余程ひどい女房ででもないかぎり、‘ゲゲゲの’という表現は、‘語感’に反しているのでやがて使われなくなるだろう。
流行語大賞ともなれば、少しは長く生き残って欲しいが、「ゲゲゲの〜」も、所詮一時の流行語に過ぎないのかもしれない。

ゲゲゲ''''鬼太郎''''女 房
1強 烈''''かわいい''''なごやか
2野性味''''輝 き''''のんびり
3荘 厳''''しっかり''''ゆっくり
4激しい理知的おおらか
5男性的イキイキ漠とした
1躊 躇''''心的・内面的''''粘り気
2迫力・勢い''''集中・纏り感''''繋がり
3固 い''''小さい''''澱み感
4賑やか''''緊張感''''湿れた
5暗 さ''''固 い''''重 い
6下 品動 き心的・内面的
7回 転離散性・個別濃 い
8大きい拡散・広がり柔かい
9粗 い滑らか暗 さ
10繋がり回 転温かい
*****************

          (平成22年12月2日)

   ヘルマン・ヘッセ  「幸福」  

(新潮文庫 ヘルマン・ヘッセ 「幸福論」 高橋健二訳)
「この語は、驚くほど重い、充実したもの、黄金を思わせるようなものを持っている、と私は思った。充実し、重みがたっぷりあるばかりではなく、この語にはまさしく光彩もそなわっていた。雲の中の電光のように、短いつづりの中に光彩が宿っていた。 ・・・ 溶けるようにほほえむように Gl と始まり、ü で笑いながら短く休止し、ck できっぱりと簡潔に終わった。」

  以下はコンピュータによる語感分析。
Glück
チャレンジング内に秘めたキ リ リ
覇 気''''根 性''''キラキラ
積極的粘 りシャープ
厳 格コツコツ緻 密
個性豊か包容力クリア
*****************************

 最初の部分はドイツの詩人ヘルマン・ヘッセの   「Glück」 に対して持っている語感である。
 迫力、力動感に、重さ、充実感を感じているようだ。(ドイツ語の G の発音は、のどの奥でしっかり発声するのでより充実感が強いのかもしれない。)
 また、ü を切り離して、光彩を感じているのも面白い。(本当は、l に滑らかな流れが感じられる。) ck は切れそのもの。
 黄金といっているのは、やや他のことばに引っ張られたのかもしれない。(GOLD=黄金,GLANZ=輝き)
 基本的には、われわれ日本人の感じ方と変わらない。

 カチカチ と チカチカ  

先日、入歯を作るため歯医者へ行った。出来上がった入歯を歯茎にはめて、「カチカチやって下さい。」と言う。何度もやるうち、「そろっと、チカチカやって。」と言った。後で先生に確認すると意識して言い分けたわけではないと言う。「カチカチ」と「チカチカ」では感じが違う。「カ」よりも「チ」の方が小さく、カワイイ感じがする。無意識に言い分けたとすると語感に鋭い感性を持っておられるのだろう。若い男の先生でした。
(平成20年10月15日)

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